司法書士が解説!認知症の母親名義の土地に家を建てたケース|解決事例

親御さんが所有する土地にマイホームを建て、二世帯で仲良く暮らしたい。
そんな素敵な計画の途中で、もし「親の認知症」という壁にぶつかってしまったらどうすればよいでしょうか。
一般的に、認知症などで判断能力が不十分になると、不動産の売却や契約行為ができなくなると言われています。しかし、決して諦める必要はありません。適切な法的手続きを踏むことで、大切なご家族の希望を叶える道が開けます。
今回は、当事務所が実際にサポートした「認知症の母親名義の土地に家を建てた」解決事例をもとに、手続きのポイントや注意点を詳しく解説します。
1. ご相談の背景:住宅ローン審査中に直面した「認知症」の壁
今回のご相談者は、お父様から相続した共有名義の土地(お母様とお父様の共有)を所有しているA様です。A様は、その土地にお母様と同居するための新居を建てる計画を立てていました。
当初、ハウスメーカーとの打ち合わせや金融機関での住宅ローン仮審査は非常にスムーズに進んでいました。しかし、問題が発生したのは「本審査」の段階でした。
なぜ認知症だと家が建てられないのか?
住宅ローンを組む際、建物を建てる土地が自分以外の名義(今回であればお母様)である場合、その土地の所有者は金融機関に対して「物上保証人」になる必要があります。
物上保証人とは、自分の不動産を他人の借金の担保に提供する人のことです。
この手続きには、本人による「担保提供の意思表示」と、契約書への署名・捺印が不可欠です。
しかし、本審査が進む中でお母様の認知症の症状が進行してしまいました。
金融機関の担当者が面談を行った際、お母様に「自分の土地を息子のローンの担保に入れる」という内容を理解できるだけの判断能力がないと判断されてしまったのです。
結果として、金融機関からは「お母様の意思確認ができない以上、このままでは融資を実行できません。成年後見人を立ててください」という条件を突きつけられることとなりました。
2. 相続人と財産の状況
今回のケースにおける具体的な状況を整理します。
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ご相談者: A様(長男)
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お母様: 認知症が進行しており、意思疎通は可能だが複雑な契約内容は理解できない状態
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対象不動産: 広島県内の土地(お母様とお父様の共有名義。お父様は既に他界されており、相続手続き未了の部分も含む)
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建設計画: 既存の建物を解体し、A様名義で二世帯住宅を新築
A様にとっては、お母様と最後まで一緒に暮らすための計画であり、放置すれば土地の活用もできず、お母様の介護環境も整わないという切実な状況でした。
3. 当事務所によるサポート内容
A様からご相談を受けた当事務所では、スムーズな融資実行と、お母様の権利擁護を両立させるために、以下のステップでサポートを開始しました。
ステップ1:丁寧なヒアリングと現状把握
まずはA様のご家族構成、お母様の健康状態、そして何より「なぜこの土地に家を建てる必要があるのか」という背景を詳しく伺いました。
成年後見制度は、あくまで「本人の利益」を守るための制度です。
単に「子供が家を建てたいから」という理由だけでは、家庭裁判所の許可が下りないケースもあります。
今回の場合、「お母様が住み慣れた土地で、息子家族と同居して手厚い介護を受けられるようになる」という点が、お母様自身の大きな利益になると判断しました。
ステップ2:成年後見申立の準備
成年後見制度を利用するためには、本人の住所地を管轄する家庭裁判所へ申立を行う必要があります。当事務所では、煩雑な書類準備を全面的にバックアップしました。
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申立書の作成: 動機や今後の予定を正確に記載。
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親族の同意取り付け: 他の兄弟姉妹などがいる場合、後々トラブルにならないよう説明を実施。
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診断書の取得サポート: 認知症の程度を証明するため、主治医に「後見」相当であるという診断書を作成してもらいます。
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登記簿謄本の収集: 土地の権利関係を明確にします。
ステップ3:家庭裁判所への申立と対応
準備した書類一式を家庭裁判所へ提出します。提出後、裁判所の調査官による調査が行われますが、ここでも当事務所がこれまでの経験を活かし、適切なアドバイスを行いました。
今回のポイントは、お母様の土地に「抵当権(担保)」を設定することの妥当性です。裁判所に対して、「この家が建つことでお母様の療養環境が劇的に改善されること」「家計が安定すること」を論理的に説明しました。
ステップ4:後見人の選任と融資手続きの再開
裁判所の審理の結果、無事にA様の親族が後見人に選任されました(事案によっては専門職が選ばれることもありますが、今回は親族間での合意が取れていたため、スムーズに進みました)。
後見人が選任されたことで、後見人がお母様の代理人として住宅ローンの担保提供契約を行うことが可能になりました。これにより、止まっていた金融機関の融資手続きが再開されたのです。
4. 解決の結果:家族の絆を守る住まいが完成
手続きの結果、A様は無事に住宅ローンの実行を受け、念願のマイホームを建てることができました。
お母様も、新しい家で息子さん家族に囲まれ、穏やかな生活を送られています。A様からは「一時はどうなることかと思いましたが、司法書士さんに相談したことで、母と一緒に住める環境を整えることができ、本当に安心しました」というお言葉をいただきました。
この事例の大きな成果は、単に家が建ったことだけではありません。「認知症になったらもう何もできない」という絶望感を、適切な法的手続きによって「前向きな家族の未来」に変えられたことにあります。
5. 手続きのポイント:知っておきたい3つのこと
今回の事例を振り返り、同様の悩みを抱えている方に知っておいていただきたいポイントが3つあります。
ポイント①:認知症でも「諦めない」ことが大切
「認知症の親名義の土地には手が出せない」と思い込み、相続が発生するまで何年も放置してしまうケースが少なくありません。
しかし、放置している間にお母様の状態がさらに悪化したり、空き家問題に発展したりすることもあります。成年後見制度や家族信託など、生前に取れる対策は必ず存在します。
ポイント②:親族間の合意がスピード解決の鍵
家庭裁判所の手続きをスムーズに進めるためには、推定相続人(子供たちなど)全員が、その計画に納得していることが非常に重要です。
今回も、ご兄弟の間で「母のために、Aが家を建てるのが一番良い」という共通認識があったことが、早い解決につながりました。
ポイント③:司法書士などの専門家へ早めに相談する
住宅ローンの審査には期限があります。
本審査でストップしてから慌てて手続きを始めると、着工が遅れたり、最悪の場合は融資がキャンセルされたりするリスクもあります。少しでも「親の判断能力が不安だな」と感じたら、仮審査の段階で専門家に相談しておくのがベストです。
6. よくある質問(Q&A)
Q. 成年後見人を立てると、ずっと費用がかかるのですか?
A. 親族が後見人になる場合は、基本的に報酬は発生しません(本人の財産から支払う必要がありません)。ただし、弁護士や司法書士などの専門職が後見人に選任された場合は、本人の財産から月額数万円程度の報酬が発生します。事案の複雑さや財産額によって裁判所が決定します。
Q. 家族信託という方法もあると聞きましたが?
A. はい、家族信託も非常に有効な手段です。ただし、家族信託は「本人の判断能力がしっかりしているうち」に契約を結ぶ必要があります。既に認知症が進行してしまっている今回のケースでは、成年後見制度を利用するのが唯一の現実的な選択肢となります。
Q. 裁判所は必ず許可を出してくれるのですか?
A. 成年後見人が本人の財産を担保に入れる(住宅ローンを組む)行為は、本人にとってリスクがあるため、裁判所は慎重に判断します。しかし、「同居して介護する」「本人の住環境が改善される」といった明確なメリットがあれば、認められる可能性は十分にあります。
7. まとめ:生前に家族の希望を叶えるために
「亡くならないと土地の取引ができない」というのは、大きな誤解です。
今回ご紹介した事例のように、認知症の方の意思を尊重し、その権利を守りながら、家族の願いを実現する仕組みが日本には備わっています。成年後見制度は、決して「財産を凍結する」ためのものではなく、「本人の幸せのために財産を正しく使う」ための制度です。
東広島・広島相続遺言の相談窓口(当司法書士法人)では、認知症と不動産にまつわる複雑な問題に日々取り組んでいます。
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親名義の土地に家を建てたいが、親の物忘れがひどくなってきた
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銀行から「後見人を立ててください」と言われて困っている
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実家の土地を売却して、親の施設費用に充てたい
このようなお悩みをお持ちの方は、ぜひ一度、お気軽にご相談ください。私たちは、お客様お一人おひとりのご家族の状況に寄り添い、最適な解決策をご提案します。
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